新市場・新規顧客開拓で事業を持続的なものにする
新市場・新規顧客開拓をどのように進めていったよいのかと悩んでおられる経営者はたくさんおられます。あるいは現在取引されている顧客と順調に取引が進んでおり、新しい顧客の必要性に気づいておられない、あるいはそこまで手が回らない経営者もおられます。
新市場開拓は「アンゾフの成長マトリックス」で紹介されている言葉ですが、皆さんの関心はむしろ新しいお客さんを開拓していくということと理解して、新規顧客開拓という言葉を使っていくことにします。厳密には新市場と新規顧客とは少しばかり意味していることが違いますが、それをあまり気にせずに話を進めていきます。
最初に新規顧客開拓がなぜ必要なのかを説明しますと、2つの理由があります。最初の理由は、企業を持続可能なものにし、売上・利益を維持・成長させるために必要だからです。既存顧客だけに頼っていては、企業の発展は考えられません。現在取引している顧客が、従来にも増して発注額を増やしてくれる、あるいは新たな商談をもたらしてくれる、などという保証はありません。つまり既存の顧客にだけ頼っていては、成長を期待することが難しくなります。第2の理由は、現在の顧客との取引がそのまま継続するとは限らないからです。現在取引している顧客が、海外に移転したり、皆さんの競合企業から購入したり、内製化を始めたり、あるいは事業そのものから撤退したり、などマイナスの動きを考えだしたらきりがありません。こういったリスクを避けるためにも新規顧客開拓は必要です。
実際に新規顧客開拓をやってみたけれど、うまくいかなかったという経験をお持ちの企業はたくさんおられます。闇雲にそういったことを行ってもうまくいかないのは当然です。
私はマーケティングの基本に従って、進めていくことを強くお勧めします。そのやり方の概略をこれから説明します。
まず自社や現在提供している製品・サービスの分析から始めます。また自社が持っている技術の棚卸も必要です。自社について、正確にかつ客観的に理解することです。特に強みや独自性をしっかり認識することは大事です。この時には様々な手法を活用します。自社についてきちんと認識できていますと、その後、計画・実行する時に、すんなりと進めていくことができます。
次にやることは現在の顧客についての分析です。このときは市場細分化の手法を使います。普通マーケティングのテキストに載っているのは、いわゆる消費財の分析に使われる変数ですが、残念ながら生産財にはそのままでは使えません。ボノナ&シャピロが生産財に適した市場細分化変数を紹介しています。この考えを使って分析を進めていきます。ここまできますと、次のようなことが分かってきます。どのような市場や顧客が自分たちに合っているのか、自分たちはどのような分野で強みや独自性を発揮してきたのか、などです。
その後は、今までの分析で得られた事実をもとに、どの業界に的を絞るか、さらに具体的にどの企業にアプローチしたらよいのかの検討をします。数社に絞り込んでから、詳しく調査を行い、実際の商談へと話を進めていきます。絞り込んだ顧客と商談を重ねていく途中で、「6人に関係者」なども使います。この概念はあまり知られておりませんが、誰が購買決定権をもっているのかなどを探りながら、より効率的に商談を進めていくには大変役に立ちます。
新規顧客開拓は、非常に企業にとっては大切なことであるにも関わらず、なかなか成功することが難しい分野です。分析を丁寧に、かつ論理的におこなっていきますと、まどろっこしく感じることがありますが、この分析の部分をしっかりやっておくと、新規顧客開拓に成功する確率はかなり高くなります。是非この方法でやってください。そのお手伝いを喜んでしたいと考えております。